一般の方にとって、人生の中で不動産(土地・建物)の名義変更を行うシーンはそんなに多くあるものでもありません。しかし、以下のような理由で不動産登記簿に記載されている情報に変更があったときは、法務局においてその情報を更新する手続き(不動産登記)をする必要があります。

不動産の名義変更が必要となるケース

1.不動産の売買

土地や建物、マンションを購入した際には、その所有者の登記名義の変更手続きが必要になります。売買契約の締結と売買代金の支払いにより、その不動産の所有権は売主から買主に移転しますが、これに伴って登記簿上の登記名義人が自動的に書き換わるわけではありません。
法務局で所有権移転登記を行うことが必要です。そして、この登記をしておかなければ、取引当事者以外の第三者に対して自己の権利を主張することができません。
一般的に、第三者から不動産を購入する際には、仲介業者である不動産業者を通して売買契約を締結します。そして、代金決済時に不動産登記の専門家である司法書士が立ち会い、登記名義の変更(所有権移転)手続きがおこなわれます。
具体的には、代金決済日当日に銀行等の取引場所で司法書士が売主と買主の本人確認と意思確認、所有権移転登記に必要な書類が揃っているかの確認を行い、全て揃っていれば買主から売主への売買代金の支払いにGOサインを出します。そこで初めて買主は代金を支払い、売主は移転登記に必要な書類・鍵の引き渡しを行います。そして、司法書士は決済終了後、その日のうちに法務局に所有権移転登記を申請します。
このように売主・買主との間に私たち司法書士が関与することで、円滑な不動産取引を実現しています。

また、上記とは異なり、不動産業者を通さず、親族間や知人・友人間での不動産の売買を行いたいというご相談も多く頂きます。
親族間、知人・友人間といった個人間での取引であっても、売買契約書の作成から代金決済、法務局での登記の手続きまでが必要なことは同じです。そして、これらの準備を全てご自分たちでされるのはとても大変です。そこで、私どもでは、必要な書類の作成と準備、取引内容の確認、代金決済から登記完了までのアドバイスとお手伝いをさせて頂きます。

2.不動産の贈与

夫婦間や親子間、もしくはその他の方に対して、生前に不動産を贈与した場合にも不動産の名義変更手続き(贈与による所有権移転登記)が必要です。

不動産の場合、例えば口頭で「あなたにあげます」「貰います」と言ったとしても、登記をしていなければ、貰った方はその所有権を第三者に対して主張することはできません。 後日のトラブルを避けるため、譲る人・貰う人の両者できっちりと書面(贈与契約書)を作成し、登記手続きを行うことが重要になります。

3.不動産の相続

不動産の所有者が亡くなり、相続した場合にはその登記名義を相続人に変更(相続登記)する手続を行います。 相続登記の手続にはいつまでにしなければならないといった申請期限などは特にありません。しかし、長い間相続登記をしないままにしておくと、将来数次相続が発生し、気が付けば相続人が多数になってしまっていた、あるいは相続人のうちの1人が行方不明になってしまった等、遺産分割協議を行うことが困難な事態になることも考えられます。適切な時期に行っていればスムーズにできるはずだった手続きが、結果として手間・費用が大幅に増加してしまう可能性があります。 相続登記は、放ったらかしにせず、なるべく早く手続をしておいた方が良いでしょう。

4.不動産の財産分与

離婚した夫婦間において、たとえば元夫名義のマンションを元妻に対し財産分与した場合に、財産分与による所有権移転登記の手続きを行います。
住宅ローンの抵当権がついている場合は、抵当権の債務者を元夫から元妻とする変更登記が合わせて必要となる場合もあります。

5.住宅ローンを組んだ時又は完済した

住宅購入時に設定した抵当権の登記は、ローンを完済した場合でも自動的に抹消はされません。法務局での抵当権の抹消登記手続きが必要です。この手続きに関して申請の期限などは特に定められてはいませんが、後日、売買や贈与により登記名義を変更したりする場合には、前提として、必ず抵当権の登記を抹消する必要があります。また、放置したままにしておくと、完済時に交付された、抹消登記に必要な銀行からの書類を紛失してしまっていたなど、手続がスムーズにできない事態にもなりかねません。ローンを完済した場合には、速やかに抹消登記を行いましょう。

6.不動産所有者の住所・氏名の変更

不動産を購入した又は相続した際に住んでいた場所から、引っ越し等で現在の住民票の住所が変わっていた場合、登記簿上に記録されている住所と現在の住所が食い違うことになります。
氏名が変わっている場合も同様です。
住所・氏名変更登記の手続きは、必ずしなければならないというものではありません。しかし、不動産を売却したり、銀行から融資を受けるために不動産に抵当権を設定したり、あるいはすでに付いている抵当権を抹消するには、あらかじめ登記簿上の住所又は氏名を現在の住所又は氏名に変更する手続き(所有権登記名義人住所・氏名変更登記)が必要となります。
その登記手続きを行うために必要となる書類のなかには、役所での取得期限があるものもあります。具体的には、住所や本籍地を転々と移転している場合における、前々住所地等での過去の住民票や転籍前の戸籍の附票等ですが、これらは5年で自動的に廃棄されてしまいます。
いざ、変更手続きが必要となったときにこれらの書類が取れず、変更の繋がりを証明できない場合には、法務局において別途イレギュラーな書類の提出を求められることになります。 住所・氏名が変わった場合には、早めに手続きをしておきましょう。

不動産の名義変更等の登記手続きが必要な場合には、登記の専門家である私ども司法書士にご相談ください。また、不動産の譲渡や相続が伴う場合には、不動産取得税、贈与税、譲渡所得税、固定資産税、相続税などの税務面についても、しっかりと検討したうえで、手続を行う必要がありますので、必要に応じて、信頼できる税理士、不動産鑑定士等の他仕業と連携してお手続きをサポートさせて頂いておりますので、安心してご相談ください。